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特集湯呑み一つから始まる、新しい自分スタイル A small cup, a quiet shift

朝、習慣のように手に取る一つの湯呑み。その所作が一日の質を決めてしまうことがあります。どの器で水を飲むか、どの椀で汁をすくうか——そうした日常の選択が、やがて生活の様式となり、自分自身の輪郭を静かに形づくっていきます。
道具は自分と生活を結びつけるメディアのような役割を果たします。新しい道具を迎え入れることは、新しい習慣を招き入れること。そして新しい習慣とは、新しい自分との出会いになるかもしれません。
「心機一転」は、引越しや転職といった大きな変化として語られますが、湯呑み一つを新調することから始まる新しい日常との対話の方が、はるかに持続的な変化をもたらすのではないでしょうか。

更新し続ける伝統
上出長右衛門窯

日本の工芸には、数百年にわたる技術と美意識が息づいています。そうした伝統の本質を深く理解し、現代の感性や価値観に合わせて新たに表現する作り手たちこそ、今の時代にまばゆい輝きを放っています。
<上出長右衛門窯>はその最良の例です。石川県能美郡寺井村で1879年に創業し、九谷焼の伝統を受け継ぎながら、現代のアーティストとのコラボレーションを通じて、工芸の新しい価値を切り拓いてきました。

描かれるモチーフはラジカセ、BMX、ヘビつかい——一見すると九谷焼の文脈から逸脱しているようですが、これは単なる奇抜さではありません。伝統技法を駆使しながら、現代的な題材を器に落とし込んでいます。
なぜ古典的な草花文様ではなく、BMXに惹かれるのか。それは「伝統とは更新され続けるもの」という真理を体現しているからです。今という時代の感性を取り込みながら、技術の核心を次世代へ手渡していく——その動的なプロセスこそが、真の意味での「伝統」なのでしょう。

【上出長右衛門窯 / かみでちょうえもんがま】湯呑 笛吹 / BMX

金継ぎという哲学——傷を美に変える思想
STUDIO NOTE

<STUDIO NOTE>の「TwoToo」ペア湯呑は、金継ぎという伝統的な修復技法をデザインの中心に据えています。
金継ぎとは、割れた器を漆で接着し、その継ぎ目を金粉で装飾する伝統的な技法です。傷を新たな美の起点とする——この思想は今、世界中で再評価されています。完璧さを追求する西洋的な美学に対し、不完全性を受容する東洋的な美意識。サステナビリティが叫ばれる現代において、金継ぎは一つの哲学として機能しています。

シンプルな白磁の表面に走る金のライン。実際には割れていない器に、あえて金継ぎ風の装飾を施すという逆説——それは「不完全さこそが個性である」というメッセージです。
このペア湯呑みは、北欧デザインが支配的な現代の洋風空間にも自然に馴染みます。ミニマリズムと温かみを高い次元で両立させているからです。

【studio note / スタジオノート】TwoToo ペア湯呑

木と漆との出逢いが
教えてくれること
我戸幹男商店

<我戸幹男商店>の汁椀は、木という素材の本質を問いかけてきます。山中漆器の産地で生み出される木の器は、使うたびに新しい発見をもたらします。
瓢型の汁椀、拭漆仕上げ。手に取ると、その軽さに驚かされます。陶磁器が「冷たさ」から始まる素材だとすれば、木は「温もり」から始まる素材です。手に馴染み、唇に優しく、熱の伝わり方すら穏やかです。

拭漆という技法は、漆を何度も摺り込み、拭き取ることで、木目を美しく浮かび上がらせます。「装飾とは覆い隠すことではなく、引き出すことである」という思想の体現です。
黒椀の玉渕は、漆黒の深みの中に木の息遣いを湛えています。光の当たり方によって表情を変えるその面は、静かさの奥に豊かさを秘めています。
そして、木と漆の椀は使うほどに味を深め、持ち主の生活の痕跡を刻んでいきます。それは"道具を育てる"という、日本の工芸ならではの美意識が息づいています。

【我戸幹男商店 / GATOMIKIO】TSUMUGI 汁椀 瓢型 / 拭漆 【我戸幹男商店 / GATOMIKIO】TSUMUGI 汁椀 玉渕 / 黒

手に取る道具が変わると所作が変わり、所作が変わると一日のリズムが更新される。暮らしとは、こうした微細な変化の積み重ねです。
道具を選ぶことは、生き方を選ぶことに通じます。伝統的な技法であっても、現代の感性で再解釈されたものは、和室にも洋室にも自然と馴染みます。重要なのは様式ではなく、その奥にある思想です。
素材を尊び、時間の跡を受け入れ、使うほどに自分の生活に溶けていくものを選ぶこと。作り手の哲学が宿る器を迎え入れることは、自分の価値観の輪郭を少しだけ描き直すことに近いのです。
選択に正解はありません。あるのは「いまの自分にとって必然かどうか」だけです。暮らしは小さな選択の連続で更新されていきます。今日選んだ一つの器が、明日の自分の時間を変えていく。心機一転とは、この静かで確かな変化の積み重ねそのものなのです。

Edit & Text: Paragraph ltd. / Photo: Yuco Nakamura

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