特集PHILOSOPHY OF BLACK 黒の魅力

黒は単なる色ではなく、姿勢である——そう言い換えることができるかもしれません。何かを加えるのではなく、引き算によって浮かび上がる本質。黒は装飾を拒み、純粋な形の美しさだけを残します。部屋の中に黒いアイテムを迎え入れることは、視覚的なノイズを抑制し、空間に緊張感と静謐さをもたらす。一方で他の色を引き立てると同時に、自らも存在を主張するという二面性が、黒を選ぶ最大の理由になるのではないでしょうか。

黒は単なる色ではなく、姿勢である——そう言い換えることができるかもしれません。何かを加えるのではなく、引き算によって浮かび上がる本質。黒は装飾を拒み、純粋な形の美しさだけを残します。部屋の中に黒いアイテムを迎え入れることは、視覚的なノイズを抑制し、空間に緊張感と静謐さをもたらす。一方で他の色を引き立てると同時に、自らも存在を主張するという二面性が、黒を選ぶ最大の理由になるのではないでしょうか。
黒が持つ大きな魅力は、素材の質感を際立たせること。光を吸収するからこそ、表面の微細な凹凸、テクスチャーの違い、仕上げの精度——それらすべてが、より鮮明に伝わってきます。
光と黒が相反しながら調和するテーブルランプがあります。柔らかく広がる光を、黒いフレームが凛とした輪郭で受け止める。<Ambientec>の「TURN+」は、その緊張感で空間に落ち着いた品格をもたらします。さらに調光機能で、空間の表情も繊細に変化させるのです。
<MAD et LEN>の溶岩石を使ったルームフレグランスは、物質としての重量感と、香りという目に見えない要素を結びつけます。黒い溶岩石の多孔質な表面は、香りを保持し、ゆっくりと空間に解放。視覚的な存在感と、嗅覚への働きかけ——黒がそれらを自然に結びつけていくようです。
黒く染められた木目——有機的な素材が無機的な色を纏ったとき、そこに生まれるのは温もりと冷静さの共存です。<amabro>の「Wood Coaster」は、手に取れば適度な重みを感じ、目で見れば空間を引き締める。そのコントラストこそが黒い木製品の魅力です。
【Ambientec / アンビエンテック】TURN+/ターンプラス テーブルランプ ブラック・【MAD et LEN / マドエレン】POURRI LAVA(溶岩石)ルームフレグランス / BLACK CHAMPAKA・【amabro / アマブロ】Wood Coaster コースター





黒はデザインの本質を浮かび上がらせます。ミニマルに削ぎ落とされた構造も、あえて装飾を加えた遊び心も——黒はその意図を、より明確に伝えます。
フレーム、アクリル板、ラバーバンド——わずか3つの要素だけで成立するフレームがあります。<MOEBE>の「スタンディングフレーム」は、黒い輪郭で空間を区切り、その内側に収められた写真やポスターを確かに主役にします。縦にも横にも置ける柔軟性。最小限の構造だからこそ、イメージそのものの存在感が静かに際立ちます。黒という色はその構造の明快さをいっそう強調しています。
通常は隠されるべき配線を、あえて空間の一部として扱うデザインがあります。<BLESS>の「CABLE JEWELRY multi plug」は、黒いケーブルと黒いプラグに装飾的な要素を加えることで、実用品を美しいオブジェクトへと変換。機能的なものを美しくすることは、生活のあらゆる細部に意識を向けることを意味します。
【MOEBE / ムーベ】スタンディングフレーム・【BLESS / ブレス】CABLE JEWELRY ケーブルジュエリー multi plug(Black&Black)




黒いアイテムを選ぶことは、ある種の匿名性を選ぶことでもあります。派手に主張せず、しかし確かな存在感を持つのです。
<SEPABATH × CIBONE>による「WHAT TOTE」は、ブランド名の呼び方をめぐる素朴な疑問から生まれました。アーティスト・加賀美健さんが描いた「シボーン、シボーネ、チボネ」という三つの読み仮名。正解のようでいて、どこか確信が持てないその曖昧さを、AIに問いかけるという現代的な行為ごとデザインに取り込んでいます。黒は過度に意味を固定することなく、その問いやユーモアを、静かに空間に留めます。
音楽という私的な体験を守るために、ミニマルな佇まいが選ばれることがあります。<STATUS>の「BETWEEN PRO」は、音響機器としての高い性能と、シンプルで美しいフォルムを両立させたイヤフォンです。装着していることを忘れるような軽やかさと、音質への妥協のなさ——黒は、機能美を端的に物語ります。
<Hender Scheme>の革製品は、黒によってその造形美が研ぎ澄まされます。必要最小限を携えるための「Pocket M」(ポーチ)、そして空間に溶け込む「Shell bowl S」。使い込むほどに深みを増す革の質感と、意味を固定しない黒の佇まいは、どんなシーンにも馴染みながら、そこに置かれたものを静かに際立たせます。黒い革製品を選ぶことは、時間とともに育つ関係性を選ぶことでもあります。




これらのアイテムに共通するのは、時代を超える価値です。黒を選ぶことは、流行を追いすぎないこと。時代や季節に左右されず、常に空間の中で変わらぬ存在感を保ち続ける——その持続性こそが、黒という色の本質的な価値なのかもしれません。
Edit & Text: Paragraph ltd. / Photo: Yuco Nakamura